
介護の研修義務、年間計画の立て方と受講管理を一緒に整理
10月。ふと研修の記録ファイルを開いたら、今年度に実施したのは4月の感染症研修だけ。「虐待防止の研修、今年はまだだったかも」「夏に入った職員さん、新人向けの研修って受けてもらったかな」——そんなふうに、ひやっとしたことはありませんか。
研修が足りないのは、怠けているからではありません。義務の研修がここ数年で一気に増えて、現場の頑張りだけでは追いきれない量になっているだけです。この記事では、研修の年間計画と「誰が・どれを・いつ受けたか」の受講管理を、事務が回しやすい形に一緒に整理していきます。
結論:研修の義務は、①自事業所に必要な研修を一覧にする → ②年度の初めにカレンダーへ「枠」だけ先に置く → ③職員ごとの受講管理表(縦に職員、横に研修)で受けた日を埋める → ④欠席者と新規採用者のフォローを月1回見る、の4つで回せます。頻度や対象はサービス種類や自治体で違うので、最終的にはお使いのサービスの運営基準・解釈通知と、指定権者(自治体)の案内で確かめてください。
何が起きているか:研修は「実施した」より「全員に届いた」が見られる
義務の研修が増えたのは、主に令和3年度(2021年度)の報酬改定です。感染症対策、虐待防止、業務継続計画(BCP)などが全サービス共通の取り組みとして加わり、3年間の経過措置を経て、2024年4月からはすべて義務になっています。
運営指導で研修について聞かれるのは、「研修をやったか」だけではありません。
- 決められた頻度で実施しているか(年1回、年2回など)
- 新規採用のときにも実施しているか
- 欠席した人にどうフォローしたか
- 内容と参加者が記録に残っているか
つまり、研修の記録は「1回の研修ごと」と「職員1人ごと」の、2つの向きで見られます。年間計画で前者を、受講管理表で後者を押さえる、と分けて考えると、ぐっと整理しやすくなります。
委員会の開催と議事録のほうは、介護の委員会一覧と年間開催計画、議事録の残し方で整理しています。この記事では、研修の側に絞ってお話しします。
① まず、自事業所に必要な研修を一覧にする
最初にやるのは、「うちは何の研修が、年に何回必要か」を1枚にすることです。よく対象になるのは次のような研修です。
| 研修 | 主な対象 | 頻度の目安 | 新規採用時 |
|---|---|---|---|
| 感染症の予防・まん延防止(訓練も) | 全サービス | 施設系は年2回以上/在宅系は年1回以上 | 施設系は必ず実施/在宅系は実施が望ましい |
| 虐待の防止 | 全サービス | 定期的に(施設系は年2回以上、在宅系は年1回以上としているものが多い) | 必ず実施することが重要とされる |
| 業務継続計画(BCP)(訓練も) | 全サービス | 施設系は年2回以上/在宅系は年1回以上 | 実施が望ましい |
| 身体的拘束等の適正化 | 施設・居住系 | 年2回以上 | 必ず実施 |
| 事故発生の防止 | 施設系が中心 | 年2回以上 | 必ず実施 |
| 認知症介護基礎研修 | 無資格で介護に直接携わる職員 | 1回の受講(修了) | 採用後1年以内に受講 |
※頻度や対象はサービス種類によって細かく違います。表は目安なので、一覧を作るときに、自事業所のサービスの運営基準と解釈通知で1行ずつ確かめてください。自治体の運営指導の手引きや自己点検シートに、研修の項目がまとめて載っていることも多いです。
このほか、加算の要件として研修を求められているもの(認知症専門ケア加算など)があれば、同じ一覧に加えておきます。「義務の研修」と「加算の研修」を別の場所で管理すると、片方だけ抜けやすくなるからです。
② 年度の初めに、カレンダーへ「枠」だけ先に置く
一覧ができたら、年間のカレンダーに日付ではなく「月の枠」を置きます。中身や講師はあとで決めれば大丈夫です。
置き方のコツは3つです。
- 年2回のものは、半年あけて置く(例:6月と12月)。年度末に2回まとめると、「定期的に」と言いにくくなります
- 同じ月にまとめられるものはまとめる(例:感染症の研修と、感染症の訓練を同じ日に。BCPの研修を、感染症・災害の訓練とあわせて)
- 3月を空けておく。予定どおりできなかった研修の、予備の月にします
在宅系で年1回のものが多い事業所なら、たとえば次のような形でも十分です。
| 月 | 置く研修 |
|---|---|
| 6月 | 感染症(研修+訓練) |
| 9月 | 虐待防止 |
| 11月 | BCP(研修+訓練) |
| 3月 | 予備(できなかった研修・欠席者の補講) |
1回の研修は、30分〜1時間ほどの短いものでかまいません。職員会議の後半を使う、動画やeラーニングを使う、外部の研修に参加してもらうなど、やり方は事業所に合わせて選べます。大事なのは、何を・いつ・誰が受けたかが残ることです。
③ 職員ごとの受講管理表をつくる

年間計画は「研修ごと」の管理なので、それだけでは「〇〇さんは受けたか」がすぐには分かりません。そこで、職員ごとの受講管理表を1枚つくります。形はシンプルで、縦に職員、横に研修を並べるだけです。
| 職員 | 入職日 | 感染症 | 虐待防止 | BCP | 認知症介護基礎研修 |
|---|---|---|---|---|---|
| Aさん | 2019/4 | 6/12 | 9/18 | — | 対象外(介護福祉士) |
| Bさん | 2023/10 | 6/12 | 9/30 補講 | — | 修了(2024/2) |
| Cさん | 2026/8 | 新任時 8/5 | 新任時 8/5 | — | 2027/7までに受講予定 |
マスには、受けた日付を書きます。資料の回覧や動画で別日に受けた人は「補講」とひとこと添えておくと、あとから見ても経緯が分かります。
認知症介護基礎研修は、介護福祉士や介護職員初任者研修の修了者などの資格を持たない方で、介護に直接携わる職員が対象です。新しく採用した方には採用後1年の猶予があるので、入職した時点で「いつまでに受けるか」を表に書いておくと、期限を見落としません。
入職・退職のときの手続きと一緒に回すなら、介護職員の入職・退職手続き|もれなく回す事務チェックリストの中に「受講管理表に1行足す」を入れておくのがおすすめです。
④ 欠席者と新規採用者を、月1回だけ見る
年間計画と受講管理表ができても、いちばん抜けやすいのは「当日休んだ人」と「年度の途中で入った人」です。ここは、月に1回、受講管理表の空いているマスを見るだけで防げます。
- 欠席した人:研修資料と、研修の録画や要点メモを渡し、読んだ・見た日を記録する。理解の確認に、簡単な感想や確認の一言を書いてもらうと、記録として強くなります
- 新しく入った人:入職のオリエンテーションの中で、感染症・虐待防止・身体拘束など新規採用時に実施する研修をまとめて実施し、日付を記録する
- 夜勤専従やパートの人:日中の研修に出にくい方は、最初から動画や資料での受講を前提にしておくと、無理がありません
月1回の確認は、請求業務が落ち着いた月の半ばなどに、カレンダーの繰り返し予定で入れておくと忘れにくくなります。
研修の記録に残しておきたいこと
1回の研修ごとに、次の項目を1枚にまとめておくと、運営指導で聞かれたときにそのまま出せます。
- 研修名と実施日時
- 講師(内部・外部)と方法(集合・動画・資料回覧など)
- 内容の要点(使った資料を添付)
- 参加者の名前(署名や出席表)
- 欠席者と、そのフォローの予定
感染症の研修と訓練の具体的な進め方は感染症対策委員会と研修の進め方、虐待防止で必要な書類は虐待防止措置の義務化、事務がそろえる4つの書類、BCPは介護のBCP義務化、まず何から?にまとめています。
具体例:年度途中で、まだ半分しかできていないとき
冒頭のように、10月の時点で「今年度はまだ1つしかできていない」と気づいたとしても、あわてなくて大丈夫です。順番に立て直していきましょう。
- 必要な研修の一覧と、今年度すでにやったものを並べる
- 残りの研修を、11月・1月・3月などに振り分けて枠を置く(年2回のものは、11月と2月のように間をあける)
- 1回あたりを30分の短い形にして、職員会議の時間を使う
- 受講管理表をつくり、すでに受けた分から埋めていく
「できていない」に気づいたのは、確かめようとしたからです。今から整えれば、年度の終わりにはきちんと形になります。
影響:計画があると、研修が「やらされ仕事」から「現場の時間」に変わる
研修の年間計画と受講管理表がそろうと、事務の側では、運営指導の前に慌てて記録を探すことがなくなります。異動や引き継ぎのときも、表を1枚渡せば済みます。
そして、現場の側にも変化があります。「いつ・何をやるか」が早めに分かっていると、現場のリーダーが研修の中身を考える時間がとれます。虐待防止や身体拘束の研修は、本来、日々のケアを振り返るための大切な時間です。事務が枠を整えることは、その時間を守ることでもあります。
明日やること
- 研修の記録ファイルを開いて、今年度にやった研修を書き出す
- 自事業所のサービスで必要な研修を、運営基準・自己点検シートで確かめて一覧にする
- 残りの月に、研修の「枠」だけ置く(中身はあとで)
- 職員名簿をもとに、受講管理表の縦軸(職員)だけつくる
- 資格を持たない介護職員がいれば、認知症介護基礎研修の受講状況を確かめる
全部を一日でやらなくて大丈夫です。今日は1と2まで進めば、それで十分です。
確認チェックリスト
- 自事業所に必要な研修を、頻度つきで一覧にしている
- 一覧の頻度を、自事業所のサービスの運営基準・解釈通知で確かめた
- 加算の要件になっている研修も、同じ一覧に入れている
- 年度の初めに、カレンダーへ研修の枠を置いている
- 年2回のものは、間をあけて配置している
- 3月などに、予備の月をとっている
- 職員ごとの受講管理表(縦に職員、横に研修)がある
- 欠席者のフォロー(資料・動画・補講)と、その日付を記録している
- 新規採用時の研修を、入職の手続きに組み込んでいる
- 無資格の介護職員の、認知症介護基礎研修の受講期限を管理している
- 研修ごとに、日時・内容・講師・参加者の記録を残している
- 月に1回、受講管理表の空いているマスを見る日を決めている
締めに
研修の義務は、数だけ見るとたしかに多いです。でも、一覧にして、枠を置いて、表のマスを埋めていく——その繰り返しにしてしまえば、毎年同じ形で回せるようになります。
マスがひとつ埋まるたびに、その職員さんが利用者さんの前で少し安心してケアできる知識をひとつ持った、ということでもあります。今日は、研修ファイルを開くところからで大丈夫です。

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