介護事業所の事務室で、ノートパソコンで集団指導の動画を見ながら、手元の印刷した資料に付せんを貼って考えている事務担当者

集団指導と運営指導の違いは?資料を事務の仕事に生かす手順

集団指導の案内が届いた。今年もオンラインで動画を見て、資料をダウンロードして、受講の報告を出して……それで終わり。資料は印刷したまま棚の上に置かれ、次に開くのは翌年の案内が来たとき。正直、そんな年があってもおかしくないと思います。請求や届出に追われている時期に届くと、なおさらですよね。

でも、少しだけもったいないところがあります。集団指導の資料には、自治体が「ここを見ていますよ」と先に教えてくれている内容が詰まっているからです。運営指導で指摘されやすい点も、制度改正で気をつけたい点も、たいていはそこに書いてあります。

この記事では、集団指導と運営指導の違いを整理したうえで、受けた集団指導を自分の事業所の仕事に生かす手順を一緒に見ていきます。

結論:集団指導は、指定権者(都道府県や市町村)が多くの事業所を対象に、制度の説明や指摘の多い事例をまとめて伝える場です。一方、運営指導(旧・実地指導)は、1つの事業所を対象に、書類やケアの実際を個別に確かめる場です。集団指導の資料は、運営指導の「予告編」として使えます。①受講したら資料の「指摘事例」と「改正点」に印をつける ②自分の事業所の書類と1つずつ照らし合わせる ③気づいたことを1枚にまとめて管理者・現場と共有する、の3つで、資料が棚の上から仕事の中に戻ってきます。まずは今年の資料を開いて、目次を眺めるところから始めましょう。

何が起きているか:集団指導と運営指導は「誰に向けて」が違う

介護保険の事業所に対する指導は、厚生労働省の「介護保険施設等指導指針」で、大きく集団指導と運営指導の2つに分けられています。2022年度からは、それまで「実地指導」と呼ばれていたものが「運営指導」という名前になりました。名前が変わったので、資料によっては古い呼び方が残っていることもあります。

2つの違いを、事務の目線で並べてみます。

集団指導運営指導(旧・実地指導)
対象管内の多くの事業所にまとめて1つの事業所ごとに個別に
主な内容制度や基準の説明、制度改正のポイント、指摘の多い事例の紹介など人員・運営の基準、報酬請求、ケアの実際を書類やヒアリングで確かめる
形講習会のほか、動画配信や資料の掲載で行う自治体も多い事業所を訪ねて行うのが基本(一部はオンラインで行うこともある)
事務がやること受講し、資料を読み、自分の事業所に当てはめる通知に沿って書類を準備し、当日に対応する

どちらも「指導」なので身構えてしまいがちですが、集団指導は一方的に説明を聞く場で、その場で事業所が何かを指摘されるものではありません。また、監査は不正の疑いなど具体的なきっかけがあるときに行う別の手続きです。違いは 運営指導と監査の違い、あわてず整理しておく にまとめています。

開催の時期や回数、動画か会場か、受講した証として視聴の報告やアンケートの提出を求めるかどうかは、自治体によってかなり違います。この記事の内容より、届いた案内の指示を優先してください。

迷いやすいのは、「動画を見た」「報告を出した」で集団指導が終わった気持ちになってしまうところです。本当に役立つのは、そのあとの数十分です。

集団指導の資料を生かす3つの手順

横に3つの枠が並び、左の枠には付せんを貼った資料の束、中央の枠には資料と事業所のファイルを並べて見比べる様子、右の枠には1枚の紙を囲んで話す2人が描かれ、それぞれの下にラベルがある図
集団指導の資料は「印をつける」「照らし合わせる」「共有する」の3段階で、自分の事業所の仕事に生かせます

一度に全部やらなくて大丈夫です。受講した週のうちに、ひとつずつ進めていきましょう。

① 印をつける:「指摘事例」と「改正点」だけ先に拾う

集団指導の資料は、何十ページにもなることがあります。最初から全部読もうとすると、それだけで疲れてしまいます。

まずは、次の2種類のページだけを探して、付せんや印をつけます。

そのうえで、自分の事業所のサービス種別に関係するところに絞ります。複数のサービスをまとめて説明している資料なら、関係のない種別のページは飛ばしてかまいません。

② 照らし合わせる:資料の1項目と、事業所の書類1つを並べる

印をつけたら、その項目ごとに「うちではどうなっているか」を確かめます。コツは、資料の1項目と、事業所の実際の書類1つを並べて見ることです。

たとえば、資料に「重要事項説明書の内容が運営規程と食い違っている例が見られます」とあれば、自分の事業所の重要事項説明書と運営規程を机に並べて、料金や営業日の記載を見比べます。「加算の算定要件を満たす記録が確認できない例」とあれば、算定している加算の記録を1か月分だけ開いてみます。

確かめた結果は、項目ごとに3つに分けておくと整理しやすくなります。

全部を事務1人で判断しなくて大丈夫です。「気になる」に入れておけば、あとで相談できます。

③ 共有する:気づいたことを1枚にまとめて渡す

照らし合わせた結果は、A4用紙1枚にまとめます。資料をそのまま回覧するより、「うちの事業所に関係するのはここ」と絞った1枚のほうが、忙しい管理者さんや現場の職員さんにも読んでもらいやすいからです。

1枚には、次のような欄があれば十分です。

まとめた1枚は、管理者さんに渡すだけでなく、集団指導の資料と一緒に綴じて保管しておきます。次に運営指導の通知が来たとき、「集団指導の内容を受けて、こう見直しました」と説明できる材料にもなります。

指導で受けた指摘を職場で共有するやり方は、運営指導の指摘を職場で共有する|再発防止を続けるしくみを一緒に も近いテーマです。

具体例:「予告編」として読んだら、通知が来ても落ち着けた

たとえば、通所介護事業所で請求と書類管理を担当している事務さんの例です。集団指導は動画配信で、例年は視聴の報告を出して終わりにしていました。

これまでのやり方 動画は業務の合間に流しながら視聴。資料は印刷してファイルに綴じたものの、その後は開かないまま。翌年、運営指導の通知が来てから、あわてて資料を探した。

今年やったこと

半年後に運営指導の通知が届いたとき、事務さんは綴じておいた1枚を管理者さんと一緒に見返しました。「ここはもう直してあるね」と確かめられたことで、準備の初日から気持ちに余裕があったそうです。

影響:集団指導を生かすと、運営指導の準備が前倒しになる

集団指導の資料を読み込んで終わりにせず、自分の事業所に当てはめておくと、次のような変化があります。

集団指導は、自治体から事業所への「お知らせ」です。受け取って、読んで、少しだけ自分の事業所に当てはめる。それだけで、指導は「来るのが怖いもの」から「準備できるもの」に少しずつ変わっていきます。

明日やること(優先順位と代替)

  1. 今年の集団指導の案内を確かめる(開催方法、受講の期限、視聴の報告やアンケートの提出が必要かどうか)
  2. 受講したら、資料の「指摘事例」と「改正点」のページに印をつける
  3. 自分の事業所のサービス種別に関係する項目に絞る
  4. 項目ごとに事業所の書類と並べ、「できている/気になる/直したい」に分ける
  5. 結果をA4用紙1枚にまとめ、管理者さんに渡す
  6. 1枚を資料と一緒に綴じて保管する

時間がとれないときは、1と2だけでも十分です。付せんが貼ってあるだけで、次に資料を開いたとき、どこから読めばいいかがすぐ分かります。

確認チェックリスト(集団指導を生かす・最小ライン)

よければ、こちらも

集団指導の資料は、自治体が事業所に向けて「ここを一緒に気をつけましょう」と書いてくれた手紙のようなものです。全部を完璧に読み込まなくても大丈夫。今日は棚の上の資料を開いて、付せんを1枚貼るだけで十分です。その1枚から、次の運営指導の準備はもう始まっています。

介護事業所の事務室で、管理者と事務担当者が1枚の紙を一緒に見ながら、うなずき合って穏やかに笑っている様子
資料を1枚にまとめて共有すると、指導は「準備できるもの」に変わっていきます

付せんを貼ったあなたの資料は、もう棚の上の飾りではありません。次の運営指導の通知が届いたとき、きっと「ここは見直してあるね」と言える場所が、いくつも見つかります。